ゴルフを始めたばかりのあなたが、練習場で最初にコーチから教わること。
ゴルフ雑誌を開けば、必ず最初のページに特集が組まれていること。
そして、多くの初心者がその本当の重要性に気づかず、なんとなく自己流で済ませてしまっていること…
それが、「グリップ(クラブの握り方)」です。
「たかが握り方でしょ?」
「それよりも、スイングの形の方が大事じゃないの?」
もしあなたが今、そう思っているのなら、今日の記事はあなたのゴルフ人生を根底から変える、最も重要なレッスンになるかもしれません。
こんにちは!元ゴルフ研修生のkenです。
プロを目指す世界で、私がスイング理論よりも何よりも先に、そして最も多くの時間をかけて矯正されたのが、このグリップでした。なぜなら、グリップはゴルフスイングという巨大な建物を支える、たった一つの「基礎」だからです。この基礎がグラグラでは、どんなに立派な柱(ボディターン)や屋根(フィニッシュ)を作ろうとしても、全てが砂上の楼閣となって崩れ去ってしまうのです。
この記事では、なぜグリップが「ゴルフの9割」とまで言われるほど重要なのか、その理由を解き明かします。そして、あなたのゴルフを台無しにしているかもしれないNGな握り方から、飛距離と方向性を劇的に改善する正しいグリップの作り方まで、その全てを写真が目に浮かぶように徹底的に解説します。
もう、当て勘だけの不安定なショットに悩むのはやめましょう。全てのショットの成否を司る、スイングの「根っこ」の部分を、ここから一緒に作り上げていきましょう。
なぜグリップが「スイングの9割」とまで言われるのか?
まず、なぜたかが「握り方」が、あなたのゴルフ全体を支配するほどの絶大な影響力を持つのか。その3つの本質的な理由を理解することから始めましょう。
理由①:あなたとクラブを繋ぐ「唯一の接点」だから
ゴルフスイングにおいて、あなたの体とクラブが唯一、物理的に繋がっている場所。それがグリップです。
つまり、あなたがスイング中に生み出した全てのパワーや、フェースをコントロールしようとする繊細な感覚は、全てこのグリップを通じてクラブに伝達されます。
この「伝達部分」に不具合があれば、エンジン(体)がどれだけ高性能でも、その力はタイヤ(クラブヘッド)まで正しく届きません。グリップは、スイングの全ての情報をやり取りする、最も重要なインターフェースなのです。
理由②:ボールの行方を決める「フェース面の向き」を司るから
あなたのボールが右へ左へと曲がってしまう最大の原因は、インパクトの瞬間に、クラブのフェース面がどこを向いているか、ただそれだけです。
そして、このフェース面の向きを、スイング中に唯一コントロールできるのがグリップなのです。
正しいグリップは、スイング中にフェースが自然とスクエア(真っ直ぐ)に戻ろうとする動きを助けてくれます。逆に、間違ったグリップは、あなたがどれだけ真っ直ぐ振ろうとしても、フェースが開いたり閉じたりする動きを助長し、OBや引っかけといった致命的なミスの元凶となります。
理由③:腕の力みを抜き、「体で打つ」スイングの土台だから
ゴルフ初心者が最初にぶつかる壁が「手打ち」です。腕の力だけでクラブを振ろうとして、飛距離も方向性も安定しない状態。これを卒業し、「体幹」を使ったスムーズなスイングを身につけるためにも、正しいグリップは不可欠です。
正しいグリップは、手首を柔らかく、しなやかに使うことを可能にします。これにより、腕の不要な力みが抜け、下半身から生まれたパワーを効率よくヘッドスピードに変換する「ボディターン」が初めて可能になるのです。
>>下半身を使った正しいスイングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

あなたは大丈夫?上達を妨げる「NGグリップ」セルフチェック
「自分は大丈夫」と思っている人ほど危険です。鏡の前で、あなたのグリップをチェックしてみてください。
NG①:スライスの元凶!“ウィークグリップ”
初心者の9割がこの握り方をしていると言っても過言ではありません。
左手を真横から添えるように握り、右手を上から被せるように握る形です。この握り方では、インパクトでフェースが開きやすく、ほぼ100%スライスの原因となります。
【チェック方法】上から見た時に、左手の拳の骨(ナックル)が1つしか見えない、または全く見えない場合、あなたはウィークグリップです。
>>スライスが止まらない原因と直し方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

NG②:引っかけ・チーピン地獄!“ストロンググリップ”のやりすぎ
ウィークグリップの逆で、左手を過剰に上から被せ、右手も下から握りすぎている形です。スライスを嫌がるあまり、この形になってしまう人が多いです。
この握り方は、フェースが返りすぎるため、ボールが左に低く飛び出す「引っかけ」や「チーピン」の原因となります。
NG③:力が全く伝わらない!“フィンガーグリップ”と“パームグリップ”の間違い
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フィンガーグリップ:指先だけで握りすぎている状態。クラブが不安定になり、当たり負けします。
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パームグリップ:手のひらでベタッと握りすぎている状態。手首が全く使えず、ヘッドが走りません。
正しいグリップは、この中間に位置する「セミフィンガーグリップ」です。
【完全マニュアル】飛距離と方向性が劇的に変わる「正しいグリップ」の作り方
お待たせしました。ここからは、あなたのゴルフを生まれ変わらせる、正しいグリップの作り方を、具体的なステップで解説します。
ステップ1:全ての基本「左手」の正しい握り方
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まず、クラブのフェース面をターゲットに真っ直ぐ合わせ、地面に置きます。
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左手の小指の付け根から、人差し指の第二関節にかけてのラインに、クラブのグリップを斜めに置きます。手のひらではなく、指の付け根で握るのがポイントです。
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そのまま、指先から順番に優しく包み込むように握ります。
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【最重要チェックポイント】この時、グリップを上から見て、左手の人差し指と中指の拳の骨(ナックル)が、2つ〜2.5個見えるように角度を調整します。これが、フェースが自然にスクエアに戻る「スクエアグリップ」の基本です。
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親指は、グリップの真ん中より、ほんの少しだけ右側に置きます。
ステップ2:方向性を安定させる「右手」の正しい握り方
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右手の生命線(親指の付け根のふくらみ)で、先ほど作った左手の親指を、優しく包み込むように上から重ねます。
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右手も、手のひらではなく指の付け根(中指と薬指)でクラブを下から支えるように握ります。
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【最重要チェックポイント】右手の親指と人差し指で作られる「V字」のラインが、あなたの右肩、もしくはアゴの右側あたりを指すようにします。このV字がバラバラの方向を向いていると、方向性は安定しません。
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右手の人差し指は、ピストルの引き金を引くような形で、グリップを軽く支えます。
ステップ3:3種類から選ぶ「両手の一体感」の作り方
最後に、左右の手を一体化させるための方法を選びます。どれが正解ということはなく、あなたのフィーリングに合うものを選んでください。
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オーバーラッピンググリップ(最もポピュラー)
左手の人差し指の上に、右手の小指を軽く乗せる握り方。手の小さい人や女性にも合いやすく、多くのプロが採用しています。 -
インターロッキンググリップ(一体感重視)
左手の人差し指と、右手の小指を絡ませる握り方。両手の一体感が非常に高まるため、手の小さい人や、非力な人におすすめです。 -
テンフィンガー(ベースボール)グリップ(パワー重視)
10本の指全てで、野球のバットのように握る方法。非力なシニアやジュニアゴルファーが、パワーを最大限に伝えたい場合に有効です。
グリップを極めるための「3つのコツ」と「魔法の練習法」
形を覚えたら、次は質を高めるためのコツです。
コツ①:力の入れ具合は「生きた小鳥」を握るように
グリッププレッシャー(握る力)は、強すぎても弱すぎてもいけません。よく言われるのが「生きた小鳥を、逃げないように、でも潰さないように優しく握る」という例えです。
10段階で言えば「3〜4」程度の力感です。特に、ショットの瞬間にギュッと握りしめてしまう癖は、ヘッドスピードを著しく低下させるので注意しましょう。
コツ②:「左手3本、右手2本」でリードする意識
グリップ全体を均等な力で握るのではなく、特に重要な指を意識することで、クラブのコントロール性は格段に向上します。
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左手:中指、薬指、小指の3本で、クラブをしっかりと下から支える。
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右手:中指と薬指の2本で、クラブを横から支える。
この合計5本の指が、スイングの主役です。
コツ③:毎回同じに握るための「ルーティン」を作る
コースでは、緊張や焦りから、グリップの形はいとも簡単に崩れます。それを防ぐために、毎回寸分違わず同じ手順でグリップを作る「ルーティン」を確立しましょう。
「まずクラブを置いて、左手を合わせて、右手を添えて…」というように、自分なりの儀式を作ることで、どんな状況でも安定したグリップを作れるようになります。
練習法:グリップ矯正の最強ツール「クラブ逆さ持ち素振り」
クラブを逆さに持ち、ヘッド側をグリップするイメージで素振りをします。クラブが軽くなるため、腕の力では「ビュン!」という風切り音は鳴らせません。正しいグリップで手首を柔らかく使い、体の回転と連動させて初めて、鋭い音が鳴るようになります。これは、正しいグリッププレッシャーと、ボディターンの感覚を養うのに最適な練習です。
まとめ:全てのショットは、あなたの「10本の指」から始まっている
ゴルフ上達の道は、長く、時に険しいものです。しかし、その旅の始まりであり、全ての基本となるのが、この「グリップ」です。
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グリップは、スイングのパワーと感覚を伝える「唯一の接点」である。
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ボールの行方を決める「フェースの向き」は、グリップで9割決まる。
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初心者はまず、「左手のナックルが2つ見える」スクエアグリップの形を完璧にマスターする。
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「力みすぎない」「毎回同じに握る」という質の部分にも徹底的にこだわる。
ドライバーの飛距離を20ヤード伸ばすのは大変な努力が必要です。しかし、グリップを正しく直すだけで、あなたのスライスがストレートボールに変わり、結果的に飛距離も方向性も、明日から劇的に改善する可能性を秘めています。
まずは、自宅でクラブを1本用意し、鏡の前で今日お伝えしたグリップの形をチェックすることから始めてみてください。その小さな一歩が、あなたのゴルフを、不安定な当て物競走から、再現性の高い知的スポーツへと進化させる、大きな一歩になることをお約束します。
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