【元研修生が明かす】トリプルボギーを叩いた次のホールで、私が必ずやっていた「5つのリセット術」

初心者向けレッスン

ゴルフというスポーツは、本当に不思議なもので、ほんの数分前まで「今日は自己ベストが出るかも!」と意気揚々としていたのに、たった一つのホールで天国から地獄へ突き落とされることがあります。

そう、悪夢の「トリプルボギー」。あるいはそれ以上の大叩き。

ティショットをOB、打ち直してまた林へ。やっとの思いでグリーンに乗せたら、そこから悪夢の3パット…。「+3」という数字をスコアカードに書き込むとき、鉛筆がやけに重く感じますよね。頭は真っ白になり、全身から力が抜け、「ああ、今日のゴルフは終わったな」と、そんな絶望的な気分に襲われる。アマチュアの方なら、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

私自身、研修生時代に嫌というほど経験しました。大事な月例競技で、優勝争いをしていた中盤での痛恨のトリプルボギー。あまりのショックに、その後の数ホールもボロボロになり、気づけば平凡なスコアで一日を終える。そんな苦い記憶が山ほどあります。

しかし、多くのゴルファーが知らない事実があります。それは、本当のゴルフ力が試されるのは、ナイスショットを打った時ではなく、この「大叩きをした直後のホール」だということです。ここでどう振る舞うかで、あなたが90を切れるゴルファーなのか、それとも永遠に100の壁を彷徨うゴルファーなのかが、残酷なまでに分かれてしまうのです。

今回は、私が研修生時代に先輩プロから教わり、そして自分自身が崩れないために徹底して実践してきた、「トリプルボギーを叩いた次のホールでの具体的な対処法」について、余すところなくお話ししたいと思います。小手先の技術論ではありません。あなたのゴルフを根底から変えるかもしれない、「思考法」と「行動」のレッスンです。

なぜ、傷口はさらに広がってしまうのか?

本題に入る前に、なぜ多くの人が大叩きの後、さらにスコアを崩してしまうのかを考えてみましょう。原因を知ることで、対策の効果がより深く理解できるはずです。

1. 「取り返そう」という焦り

最も多いのがこのパターンです。「+3」を叩いたのだから、すぐにバーディーやパーを取って損失を取り戻さなければならない。そう考えた瞬間、あなたのゴルフは崩壊への道を歩み始めます。普段なら狙わないような狭いルートを攻めたり、無理にピンをデッドに狙ったり、ロングパットをねじ込もうと力んだり…。この「攻撃的な姿勢」は、一見ポジティブに見えますが、その実態は冷静さを失ったただの暴走です。結果は、さらなるOBや池ポチャ、深いバンカーといった、新たなトラブルを招くだけです。

2. ネガティブ思考の無限ループ

「またOBを打ったらどうしよう」「アプローチでまたザックリするんじゃないか」。一度大きなミスをすると、その失敗のイメージが脳裏に焼き付き、次のショットへの恐怖心を生み出します。この恐怖心は、あなたの体を確実に萎縮させます。スイングは小さくなり、フィニッシュまで振り切れず、インパクトで緩む。こうして、恐れていたミスを自ら引き起こしてしまうのです。まさに、負の連鎖です。

3. プレーが「雑」になる

集中力が切れ、すべてがどうでもよくなってしまう状態です。悔しさや怒りを通り越して、一種の「諦め」の境地に入ってしまう。こうなると、一つ一つの所作が驚くほど雑になります。ティアップの位置は適当、素振りはそこそこ、アドレスの向きも確認しない、パットのラインもろくに読まない。これでは、ナイスショットが生まれるはずもありません。ゴルフは「準備のスポーツ」です。その準備を怠れば、悪い結果が出るのは当然の報いなのです。

研修生時代の私も、これらの罠にことごとくハマりました。そして、何度もラウンドを台無しにしてきました。そんな私を見かねた一人の先輩プロが、ある日こう言いました。

「いいか、ゴルフはミスのスポーツだ。プロだってトリを叩く。大事なのは叩いた後だ。次のホールを、お前は『新しいゴルフの始まり』にできるか?」

この言葉をきっかけに、私は大叩きした後の「リセット術」を徹底的に研究し、実践するようになりました。その中でも特に効果が高かった、5つの具体的な行動をご紹介します。

私が必ずやっていた「5つのリセット術」

トリプルボギーを叩いたホールを終え、次のティグラウンドへ向かう。この短いインターバルの間に、あなたの心と体を「ゼロ」の状態に戻す儀式です。一つでもいいので、次のラウンドで試してみてください。驚くほど冷静な自分を取り戻せるはずです。

リセット術①:物理的なリセット「深い呼吸」と「水分補給」

まず、最も簡単で、最も効果的な方法です。ティグラウンドに着いたら、ショットを打つ前に必ずこれを行ってください。

  1. ゆっくりと、鼻から息を吸う(4秒かけて)

  2. 一度、息を止める(4秒間)

  3. 口から、ゆっくりと、長く息を吐き出す(8秒かけて)

ポイントは、「吐く息」を「吸う息」の倍くらいの時間をかけて、細く長く行うことです。これを2〜3回繰り返してください。怒りや焦りで上昇した心拍数が落ち着き、脳に新鮮な酸素が送られることで、冷静な判断力が戻ってきます。これは、交感神経が優位になった興奮状態から、副交明神経が優位なリラックス状態へ、強制的に体を切り替えるスイッチです。

そして、必ず一口か二口、水を飲んでください。夏場はもちろん、冬場でもです。これは単なる水分補給ではありません。一度立ち止まり、飲み物を飲むという「行為」そのものが、高ぶった感情の流れを断ち切る「間」を作ってくれるのです。「頭に血が上ったら、まず水を飲め。話はそれからだ」。これは、私が研修生時代に何度も言われた言葉です。物理的に体をクールダウンさせることが、メンタルをリセットする一番の近道なのです。

リセット術②:思考のリセット「スコアカードを一時的に封印する」

トリプルボギーを叩いた後、すぐにスコアカードに「+3」と書き込んでいませんか? 実は、この行為があなたのメンタルをさらに蝕みます。その数字を見るたびに、脳は「自分は3つもオーバーしたんだ」というネガティブな情報を再認識し、プレッシャーを増幅させてしまうのです。

私がやっていたのは、「大叩きしたホールのスコアは、すぐには書かない」というルールです。ホールアウトしたら、スコアカードはポケットの奥にしまい、見ないようにする。そして、次のホール、あるいはその次のホールでパーやボギーを取って気持ちが落ち着いたときに、初めてまとめて記入するのです。

「過去は変えられない。変えられるのは未来のホールだけ」。これはゴルフの鉄則です。終わったホールのスコアという「過去の記録」を視界から消すことで、意識を強制的に「今、目の前にあるホール」に集中させる。これは非常に強力なメンタルコントロール術です。同伴者に迷惑がかからない範囲で、ぜひ試してみてください。過去の失敗から物理的に距離を置くことで、驚くほど前向きな気持ちで次のティショットに臨めるようになります。

リセット術③:目標の再設定「『パー』から『ボギー』へ下方修正する」

「取り返そう」という焦りが最大の敵であることは先述の通りです。では、どうすればその焦りを消せるのか。答えは、「次のホールの目標を、意図的に低く設定する」ことです。

具体的には、「このホールは、絶対にパーを取る」ではなく、「このホールは、最悪ダブルボギーでもいい。なんとかボギーで上がれれば上出来だ」と、自分の心に言い聞かせるのです。

例えば、400ヤードのパー4。いつもなら「ドライバーでフェアウェイ、セカンドでグリーンオン、2パットのパー」を狙うところを、次のように計画し直します。

  • 1打目: ドライバーではなく、5番ウッドやユーティリティで、とにかくフェアウェイの広いエリアに置くことを最優先する。

  • 2打目: グリーンを直接狙わない。グリーン手前の、アプローチがしやすい花道に運べれば100点満点。

  • 3打目: そこから確実にグリーンに乗せる。

  • 4打目、5打目: 2パットで沈めて、ナイスボギー!

どうでしょうか。このプランを立てただけで、ティショットのプレッシャーが半分以下になった気がしませんか? 「パーを取らなければ」という強迫観念から解放されると、体は驚くほどスムーズに動きます。そして不思議なことに、リラックスして打った結果、セカンドショットがうまくグリーンに乗ってパーが取れてしまう、なんてこともよく起こるのです。

これは「逃げ」ではありません。スコアをマネジメントするための、極めて高度な「戦略」です。プライドを捨て、目標を現実的なレベルに下方修正する勇気。これこそが、大崩れを防ぐための最も賢い選択なのです。

リセット術④:プレーのリセット「丁寧すぎるほどのルーティン」

心が乱れると、行動は雑になります。その逆もまた真なりで、行動を丁寧にすることで、心は落ち着きを取り戻します。大叩きした次のホールでは、あなたの「プレショットルーティン(ショット前の準備動作)」を、意識的に、これでもかというくらい丁寧に行ってみてください。

  • ティアップ: いつもより時間をかけて、ボールのロゴを目標に向け、高さをミリ単位で調整する。

  • 後方確認: ターゲットラインを2度、3度と確認する。深呼吸をしながら、最高の弾道をイメージする。

  • 素振り: フィニッシュまでしっかり振り切る、理想のスイングを体に思い出させるように、ゆっくりと2回行う。

  • アドレス: 足の位置、肩の向き、ボールとの距離。一つ一つを指差し確認するくらいの気持ちでセットアップする。

  • グリップ: 一度軽く握り、もう一度、力を抜いて優しく握り直す。

これらの動作を、まるでスローモーションのように、一つ一つ噛みしめるように行います。これは、パニックになった脳に「おい、いつもの動きを思い出せ。大丈夫だ」と語りかける作業です。特に効果的なのは「歩く速さ」です。焦っている時、人は無意識に早足になります。カートからボールへ向かうとき、次のショット地点へ移動するとき、意識してゆっくり歩いてみてください。歩くリズムが、心のリズムを整えてくれます。

どんな状況でもルーティンを変えないのが一流のプロです。その理由は、ルーティンが平常心を取り戻すための最強の「錨(いかり)」だからです。雑念を払い、目の前の一打に集中するための儀式。それを、これ以上ないくらい丁寧に行うのです。

リセット術⑤:究極のリセット「クラブを1本、変えてみる」

これは少し劇薬かもしれませんが、流れを断ち切るための最終手段として、非常に有効です。それは、「いつもの自分なら絶対に選択しないクラブを使う」という方法です。

例えば、ティショットをドライバーでOBにしてトリプルボギーを叩いたとします。次のホールもドライバーが握りたくなるようなパー4。しかし、ここであなたは敢えて、ドライバーをキャディバッグにしまったまま、5番アイアンを手に取るのです。

「え、アイアンでティーショット?」と思うかもしれません。そうです。これは安全策という意味合いもありますが、それ以上に「悪い流れを断ち切る」という、強い意志表示の儀式なのです。ドライバーで失敗した記憶、ドライバーへの不信感。それらを一度すべてリセットするために、全く違うクラブで、全く違うゴルフを始める。

この選択は、あなたに「プライドを捨てる勇気」を要求します。同伴者から「刻むのか?」と言われるかもしれません。飛距離を大きくロスすることも受け入れなければなりません。しかし、その代償として、あなたは「心の平穏」と「新しいリズム」を手に入れることができます。5番アイアンでフェアウェイの真ん中に「カツン」と打てたとき、ドライバーでのOBの記憶は遠のき、「ああ、ゴルフはこうやって芯に当てればいいんだ」というシンプルな感覚を取り戻せるはずです。

悪い流れに乗り続けて沈むくらいなら、一度自分で流れを断ち切り、新しい流れを作る。これもまた、スコアを守るための立派なコースマネジメントなのです。

まとめ:トリプルボギーは、あなたを強くする「良薬」である

トリプルボギーは、誰にとっても痛恨の一打です。しかし、その経験は決して無駄ではありません。それは、あなたの技術的な弱点、メンタル面の脆さ、コースマネジメントの甘さを、これ以上ないほど明確に教えてくれる「警告」なのです。

落ち込むのは、その日の夜、お風呂に浸かっている時で十分です。ゴルフのラウンド中に必要なのは、反省ではなく「対応」です。

今回ご紹介した5つのリセット術は、いわば応急処置です。しかし、この応急処置ができるかどうかで、その日のスコア、ひいてはあなたのゴルフ人生が大きく変わってきます。大叩きした次のホールを、なんとかボギーで切り抜ける。この「耐えるゴルフ」ができた時、あなたはバーディーを取った時以上の達成感と、確かな成長を実感できるはずです。

トリプルボギーは毒薬ではありません。使い方次第で、あなたを次のレベルへと引き上げてくれる「良薬」にもなり得るのです。

この記事が、あなたの次のラウンドで訪れるかもしれない「悪夢の時間」を乗り越えるための、一助となれば幸いです。諦めずに、粘り強く、賢くプレーする。それこそが、ゴルフ上達への一番の近道なのですから。

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